アパホテルの偽装建築に想う

saitoukanchou2007-01-27

今まで実に様々な仕事をしてきた僕にとって、過去の仕事で起きたエピソードというのは枚挙に暇がないわけで(笑)。
そんな中でもフリーター生活(実に10年近くも)をしている時によくやってた仕事は、建築現場での肉体労働だったんだよね。日払いでもらえるのが魅力だったんでね・・・。

 今回、そうした「建築」についてちょっと思うことがあったんで、書いてみたいと思います。


 いわゆる派遣のアルバイトで、いきなり知らない建築現場へ行き、クライアントさんの指示に従っていろんな仕事をする。

 っていってももう、完全な”頭数”なんで、する仕事といったらもっぱら、物を移動したりっていうもの。

 そんな中・・・本当に色々な現場があったんだよね。
 現場では色んな施工主に対しての内覧会や、建設途中での証拠写真や下見とかもあるんだけど・・・明らかにズルしている現場は・・・ねえ・・・。

 でもね、依頼する施工主にも問題はあると思うんだよね。

 もう、どんな建物でも、まず依頼主から出る言葉は「安く」だって・・・これは、世田谷の現場の親方がそうボヤいてたんだけど・・・。

どんなにいい仕事をしてもしようとしても、到底ありえない価格を提示して、結局そのよその業者が仕事を取って行っちゃうんだって・・・。
で、その「到底ありえない」価格で仕事を取った業者がすることは、下請けを叩くことと、手抜き工事・・・。こんな状況で良い建物なんて、立つわけがないと思うのは僕だけでしょうか??


昔の人ばかりを賞賛するのもアレかもしれないけど、そんな世田谷の現場であったちょっといい話を。

 その世田谷の現場では、鳶・土工の親方に付いての補佐的な仕事をしてました。
 その親方は世田谷で何代も続く鳶職の方でした。
 やはりそうした何代も続く職人さんには地元で代々仕事を頼む依頼主も多くいるわけで、その日請けた仕事は、半世紀ほど前に、先々代のその職人さんの祖父にあたる職人さんが手掛けた建物の立替えで、基礎の部分を壊すという仕事だったんです。
家にはそれぞれ”基礎”と言われる部分があって、そこはコンクリートと鉄筋で家の間取りに合わせたものがそれぞれ作られるわけです。
 僕は職人さんから借りたデグマ(電動でコンクリート基礎を壊す道具で、先端に太いノミのようなものを付けます)や大ハンマーを使い、壊し始めましたが・・・これがなかなか壊れない!!僕自身、その当時はまだまだ体力にも自信があったので、渾身の力を込めて何度もチャレンジしたんですが・・・なかなか壊れない。

で、それを見かねた親方が、親方の祖父が作った基礎を壊そうとしたのですが・・・結果は同じでした。結局もう一回り大きな道具を急遽、職人さんが持ってきて何とかなったのですが、その時に親方がしみじみと、「じいさん、いい仕事したんだなあ・・・」って言っていたのが印象的でした。

 あ、そういえば南千住にあった「東京スタジアム」も、かなり頑丈に作られたようで、解体にはかなり苦労したそうですしね・・・。

 でも、良い建物を作りたいと願うそうした職人さんがまだまだいますし、姉歯さんや今回のアパの騒動で、建築屋さんが皆、そうした”手抜き”っていう疑惑やイメージで見られるのって、辛いです。
 今後、建築屋さん自身の努力も去ることながら、依頼する側の意識を変えていく事も必要なんじゃないかって・・・そう思います。


「まず安く」ではなく「まず丈夫」へと・・・。